内容も発行日も定まっていない雑誌(仮称) 〜2007年 8月14日号〜
「世界陸上大阪上陸!」
男子20km競歩、女子やり投げの日本記録を更新いたしました(2013年 5月21日)
※当ページは、2007年に開催されました「第11回IAAF世界陸上競技選手権大阪大会」を前に、陸上競技の魅力について書いたものですが、各競技・種目の内容や見所などは現在でも通用するものと思いますので参考になさってください。

2007年8月25日から9月2日まで、大阪市の長居陸上競技場で「第11回IAAF世界陸上競技選手権大阪大会」(以下「世界陸上大阪」)が開催されます。

IAAF世界陸上競技選手権大会」(以下「世界陸上」)は、その名の通り陸上競技の世界選手権で、2年に1回(1983年から1991年までは4年に1回)開催されており、日本で開催されるのは1991年の東京大会以来16年ぶりのことです。 「世界陸上大阪」には、世界212の国と地域から約3200人の選手・役員が参加する予定(最終的なエントリーリストでは、203の国と地域から2003選手)で、参加国数だけで見れば、おそらく世界最大のスポーツイベントでしょう。

過去10回開催された「世界陸上」では、世界新記録が18回誕生しています。 平均すれば、1大会につき1.8回という計算になり、「世界陸上大阪」でも世界新記録が誕生する瞬間が見られるかも知れません。 長居陸上競技場では「世界陸上大阪」に向けて、IAAF(国際陸上競技連盟)の「クラス1」規格に認定されるよう、トラックの改装工事が行われました。 改装後初の国際大会となった国際グランプリ陸上大阪大会に出場した選手の感想からしますと、反発力の強い高速トラックに仕上がったようですので、より一層世界新記録の誕生に期待が高まります。

「世界陸上」の過去10大会で、日本人選手は17個(金3、銀5、銅9)のメダルを獲得しています。 第9回のパリ大会では4個(銀1、銅3)のメダルを獲得しましたが、表彰台に一人も上がれなかった大会もありました。 今大会は地元日本での開催ですから、日本人選手の皆さんも、きっと活躍してくれることでしょう。

陸上競技には、トラックを使って行われる短距離競走中距離競走長距離競走障害物競走ハードル競走リレー競走、 フィールドを使って行われる跳躍競技投擲(とうてき)競技、トラックとフィールドの両方を使って行われる混成競技、 主に道路を使って行われるマラソン競歩(トラックで行われる場合もあります)があります。 このうち「世界陸上大阪」では、男子24種目、女子23種目が行われます。 なお、各種目の記録は、トラックで行われるものは(10000m以内の距離で電気計時、つまり写真判定の場合)100分の1秒単位、フィールドで行われるものは1cm単位、主に道路を使って行われるものは秒単位と決められています。

日本で開催される「世界陸上大阪」をきっかけに、長居陸上競技場で、テレビ(TBS系列で放送)で、是非陸上競技の素晴らしさに触れてみてください。


〜 短距離競走 〜

短い距離を競走する種目の総称で、100m競走200m競走400m競走が含まれます。 スタートは「スターティングブロック」と呼ばれる、選手の足を支え、蹴りを受け止める道具を使用し、「クラウチングスタート」(腰をかがめて両手の指を地面についた姿勢から出発する方法)で行います。 スターティングブロックにはセンサーが組み込まれていて、スターター(出発の合図をする人)の号砲(合図として撃つピストル)から0.1秒未満(1000分の100秒未満)で反応した場合には、「フライング」(不正スタート)と見なされます。 「フライング」は1レース中に計1回しか認められず、2回目以降にした選手は(1回目の選手が誰かは関係なく)すべて失格となります。 (※2010年より「フライング」は一切認められず、した選手は失格になります) レースは白線で区切られたレーン内を走る「セパレートレーン」(「セパレートコース」とも言います)で行われます。


〜 100m競走(100m) 〜

直線(直走路)100mを競走する種目です。 陸上競技の華で、「世界陸上」では「世界最速」を争います。 男子の場合10秒前後で勝負が決まります(世界記録は9秒58です)ので、短距離の中でも特にスタートの重要度が高い種目と言えるでしょう。 緊張感が漂う中、集中力を高め、一瞬の静寂が訪れるスタートは見所のひとつです。 スタートの重要度ゆえに「フライング」が起こりやすい種目でもあります。

距離が短い100m競走とは言え、最大限の力を使って加速すると、ゴールまで体力が持ちません。 無駄な力を使わず効率良くスムーズに加速すると、50m〜60m地点で最も速度が高くなり、後半の失速が最小限に抑えられます。 効率の良い加速をした選手を指して「後半伸びた」という言い方をしますが、実際に後半の速度が(中盤以上に)上がったわけではなく(50m〜70m地点のほうが80m〜100m地点よりも速度は高い)、他の選手と比較して失速(速度の低下)が最小限に抑えられたので、見た目ではそのように感じるのです。

スタートが得意で先行する前半型の選手と、効率の良い加速をして追い上げる後半型の選手がいますので、ゴールの瞬間まで勝負は分かりません。 短い時間の中にも凝縮されたレース展開が楽しめます。

男子の世界記録:
9秒58(ウサイン・ボルト/ジャマイカ)
男子の日本記録:
10秒00(伊東 浩司)
女子の世界記録:
10秒49(フローレンス・グリフィス=ジョイナー/アメリカ合衆国)
女子の日本記録:
11秒21(福島 千里)

〜 200m競走(200m) 〜

曲線(曲走路)と直線(直走路)、合わせて200mを競走する種目です。 曲走路からスタートし加速しますので、直走路に入るまでは、遠心力で外側に振られないよう、体を内側に傾けて走ります。 この曲走路での走りがタイムに大きく影響しますので、100m競走とは異なり、コーナーリング技術が必要です。 体を傾けて曲走路を加速する姿は美しく、100m競走の力強い加速とは、また違った魅力があります。 また、100m競走以上に、無駄な力を使わず効率よくスムーズに加速することが重要で、そうしなければレース後半で大幅に失速(速度が低下)してしまいます。

曲走路の長さはレーンによって異なります(円周の長さは半径に比例します)ので、ゴール地点までが同じ距離になるよう、200m競走のスタートラインは階段状になっています。 そのため、前半の曲走路ではやや順位が分かりにくいのですが、直走路に選手が入ってくると分かりやすくなります。 曲走路で上手に加速した選手が、直走路に入ったところで前に出ているでしょう。 そして残り50m、失速(速度の低下)を最小限に抑えた選手が、時には追い上げ、時には逃げて、勝負を決めるのです。

男子の世界記録:
19秒19(ウサイン・ボルト/ジャマイカ)
男子の日本記録:
20秒03(末續 慎吾)
女子の世界記録:
21秒34(フローレンス・グリフィス=ジョイナー/アメリカ合衆国)
女子の日本記録:
22秒89(福島 千里)

〜 400m競走(400m) 〜

曲線(曲走路)2つと直線(直走路)2つで構成される、トラック1周400mを競走する種目です。 スタートラインは200m競走と同じように(位置は違いますが)階段状になっています。

短距離走では高い速度を維持するために、比較的高い強度の運動を続けることになります。 この場合、筋肉を動かす(つまり筋収縮の)ために必要な(直接的)エネルギーであるATP(アデノシン三燐酸)の再合成(ATPは筋肉中に少ししか含まれませんので常に再合成が必要です)は、大半(おそらく60%以上、400m競走の場合で60%程度)が非乳酸性機構(クレアチン燐酸の分解によるもの)と乳酸性機構(多糖類の一種であるグリコーゲンが乳酸に分解されることによるもの)と呼ばれるエネルギー供給機構(エネルギー獲得機構とも言います)で行われます。 非乳酸性機構と乳酸性機構では酸素を必要としませんので、これらのエネルギー供給機構による筋収縮は、(呼吸をするしないにかかわらず)無酸素運動と呼ばれています。 非乳酸性機構と乳酸性機構によるATPの再合成は、合計で40秒ほどしか持続できないとされています。

400m競走では、40秒以上(男子の世界記録は43秒18)にわたり高い速度で走り続けるわけですから、無酸素運動の限界に挑む、非常に過酷な種目と言えるでしょう。 (無酸素運動とはいえ、非乳酸性機構と乳酸性機構だけではなく、400m競走の場合で40%程度は有酸素性機構によるATPの再合成が行われているようです。ただ、有酸素性機構による筋収縮では大きな力を出すことができませんので、高い速度を維持することにはあまり役立っていないと思われます)。 その過酷さは、最後の直線で限界を迎えた体にムチ打って走る苦しい表情と、ゴールした後の様子を見ていただければ一目瞭然です。 最後の直走路では、どの選手もまるで足が止まったかのように失速(速度が低下)しますが、苦しさのなかで足を動かし続け、極力スピードを維持した選手が過酷なレースを制します。

男子の世界記録:
43秒18(マイケル・ジョンソン/アメリカ合衆国)
男子の日本記録:
44秒78(高野 進)
女子の世界記録:
47秒60(マリタ・コッホ/ドイツ民主共和国、通称:東ドイツ)
女子の日本記録:
51秒75(丹野 麻美)

〜 中距離競走 〜

短距離競走と長距離競争の中間にあたる種目の総称で、800m競走1500m競走が含まれます。 スタートは立った状態で構えて出発する「スタンディングスタート」を用います。短距離競走のスピードと長距離競争の持久力、両方の能力が必要な種目です。


〜 800m競走(800m) 〜

トラック2周、800mを競走する種目です。 スタートラインは200m競走や400m競走と同じように(位置は違いますが)階段状になっています。 スタート時は「セパレートレーン」ですが、第1曲走路の終わり(1つの曲走路は2つのコーナーで構成されていますので、「第2コーナーの出口」とも言います)にある円弧状の「ブレークライン」(「ブレイクライン」)以降は走路が区分されていない「オープンレーン」(「オープンコース」とも言います)になります。

「セパレートレーン」から「オープンレーン」になる「ブレークライン」(「ブレイクライン」)を過ぎると、各選手は一斉に内側(第1レーン)へ入ってきて、少しでも良い位置で走るための激しいポジション争いを行います。 その後も、短距離競走に近いスピードで走り、体をぶつけ合うぐらいの勢いで(実際にぶつかることもあります)順位を競い合う、激しい駆け引きが行われるのです。 その過酷さと激しさを見れば、「走る格闘技」の異名がつくのも頷(うなず)けるでしょう。

男子の世界記録:
1分40秒91(デービッド・レクト・ルディシャ/ケニア共和国)
男子の日本記録:
1分46秒16(横田 真人)
女子の世界記録:
1分53秒28(ヤルミラ・クラトフビロバ/チェコスロバキア社会主義共和国)
女子の日本記録:
2分00秒45(杉森 美保)

〜 1500m競走(1500m) 〜

トラックを3と3/4(4分の3)周、1500mを競走する種目です。 レースは走路が区分されていない「オーブンレーン」(「オープンコース」とも言います)で行われ、スタートラインは全選手が同じ距離を走るよう円弧状になっています。

一般的な感覚では、1500mは少し長い距離と感じ、比較的ゆっくり走るように思えるかも知れません。 しかし、男子の世界記録は3分26秒00です。 100mを平均約13秒73で走る計算となり、実はかなりのスピードで走る種目なのです。 しかも、実際のレースでは一定のペースで走るわけではありません。 選手間の駆け引きが行われるなか、常にペースは変動し、ときには短距離競走並みのスピードで走ることもあります。 また、良いポジション(位置)を確保するために体がぶつかり合うこともあり、800m競走同様の、あるいは人数が多い分(決勝時、800m競走は8人、1500m競走は12人)それ以上の格闘技的な要素も持っています。 いつ誰がどのタイミングで飛び出すのか、それはスパートなのか、揺さぶりなのか、レース展開は激しく、ゴールするまで目が離せません。

男子の世界記録:
3分26秒00(ヒシャム・エルゲルージ/モロッコ王国)
男子の日本記録:
3分37秒42(小林 史和)
女子の世界記録:
3分50秒46(曲雲霞/中華人民共和国)
女子の日本記録:
4分07秒86(小林 祐梨子)

〜 長距離競走 〜

長い距離を競走する種目の総称で、5000m競走10000m競走マラソンが含まれます。 円弧状のスタートラインから「スタンディングスタート」でスタートし、レースは「オープンレーン」(「オープンコース」)で行われます(主に道路を使って行われるマラソンは除く)。 一定のペースで走ると思われがちな長距離競走ですが、国際的な大会などでは、そのイメージとは異なるレース展開が繰り広げられます。 特にトラックで行われる種目(5000m競走、10000m競走)はその傾向が強く、駆け引きの中でペースが激しく変動することも少なくありません。 最後の一周が中距離競争を思わせるスピードになることもあります。

長距離競争を制するには、長い距離を戦い抜く持久力と、ペース配分や駆け引きなどの戦略を自在に実行できる能力が必要です。 また、トラックで行われる種目(5000m競走、10000m競走)では、ラストスパートのために、中距離競走なみのスピードを持っている選手もいます。


〜 5000m競走(5000m) 〜

トラックを12と1/2(2分の1)周、5000mを競走する種目です。

男子の世界記録:
12分37秒35(ケネニサ・ベケレ/エチオピア連邦民主共和国)
男子の日本記録:
13分13秒20(松宮 隆行)
女子の世界記録:
14分11秒15(ティルネッシュ・ディババ/エチオピア連邦民主共和国)
女子の日本記録:
14分53秒22(福士 加代子)

〜 10000m競走(10000m) 〜

トラックを25周、10000mを競走する種目です。

男子の世界記録:
26分17秒53(ケネニサ・ベケレ/エチオピア連邦民主共和国)
男子の日本記録:
27分35秒09(高岡 寿成)
女子の世界記録:
29分31秒78(王軍霞/中華人民共和国)
女子の日本記録:
30分48秒89(渋井 陽子)

〜 マラソン 〜

主に道路を使用し、42km195を競走する種目です。

男子の世界記録:
2時間03分38秒(パトリック・マカウ・ムショキ/ケニア共和国)
男子の日本記録:
2時間06分16秒(高岡 寿成)
女子の世界記録:
2時間15分25秒(ポーラ・ラドクリフ/グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国、通称イギリス)
女子の日本記録:
2時間19分12秒(野口 みずき)

〜 障害物競走 〜

障害物と水濠(すいごう)を越えながら競走する種目の総称で、3000m障害物競走が含まれます。 スタート後、フィニッシュラインを最初に通過して以降の各周に5個の障害物があり、そのうちの4番目には(障害物に接する形で)水濠も設けられています。 障害物は均等距離に置かれていますので、各障害物間の距離は1/5(5分の1)周ということになります(この場合の1周は、400mトラック1周ではありません)。 水濠は水を満たすために掘り下げられていますので、トラック上に設けることはできません。 そのため、水濠はトラックの内側または外側に設置されており、1周が400mのトラックを使用していても、障害物競走における1周は400mにはなりません。

障害物のイメージCG 障害物は、平均台のような形状で、上に乗ることも可能なように頑丈な構造を持ち(80kg〜100kgの重量があります)、白と黒のように対照的な色で交互に塗り分けられています。 高さは男子が914mm、女子が762mmで、幅は1台の障害物を全選手が跳び越え(あるいは乗り越え)られるように、3m940以上(水濠に接している障害物は3m660)あります。

水濠の断面イメージCG 水濠の直前には接する形で必ず障害物が設置されていますので、通常はこの障害物も含めて「水濠」と呼びます。 水濠は障害物も含めて、長さが3m660、幅が3m660です。深さは障害物に接するところが最も深く、300mmにわたり700mmの深さがあります。 その先は、逆側がグラウンド面と同一になるよう傾斜しています。 水濠の水は、跳び越えることも、その中を走ることも可能です。


〜 3000m障害物競走(3000m障害、3000mSC) 〜

障害物を28回と水濠(直前に設置された障害物も含む)を7回越えながら、3000mを競走する種目です。 円弧状のスタートラインから「スタンディングスタート」でスタートし、レースは「オープンレーン」(「オープンコース」)で行われます。 なお、「3000mSC」の“SC”は、“SteepleChase”の略です。

障害物は頑丈で重く、上に乗ることができる反面、足を引っ掛けるとその選手は転倒してしまいますので、慎重に越えなければなりません。 比較的高さのある障害物を、極力時間の無駄を抑えて正確に越えるためには、スピードとジャンプ力を生み出す瞬発力が必要です。 そして、障害物を越える際には、大きなエネルギーを使うだけではなく、着地する時の衝撃で足に負担が掛かります。 水濠は、水の中を走れば抵抗となって体力を奪い、跳び越えれば大きなエネルギーを消耗させます。 それを合計35回も繰り返しながら3000mを走りきるのですから、相当な持久力が必要です。 野山を駆け巡るクロスカントリーを、トラックで行っているようなものでしょう。

「世界陸上大阪」が開催される長居陸上競技場では水濠がトラックの外側に設置されていますので、3000m障害物競走は観客席から最も近い距離で競技中の選手を見ることができる種目でしょう。

男子の世界記録:
7分53秒63(サイフ・サイード・シャヒーン/カタール国)
男子の日本記録:
8分18秒93(岩水 嘉孝)
女子の世界記録:
8分58秒81(グルナラ・サミトワ−ガルキナ/ロシア連邦)
女子の日本記録:
9分33秒93(早狩 実紀)

〜 ハードル競走 〜

ハードルを跳び越えながら競走する種目の総称で、100mハードル競走110mハードル競走400mハードル競走が含まれます。 短距離競走と同じように、スタートは「スターティングブロック」を使用した「クラウチングスタート」、レースは「セパレートレーン」(「セパレートコース」)で行われます。

なにも置かれていないトラックを走るのと比べ、ハードルを跳び越えることで余分に時間が掛かるのは避けられませんが、良いタイムを出すためには、そのタイムロス(時間の無駄)を極力抑えなければなりません。 ハードルを不必要な高さで跳ぶことも、跳び越える前後にスピードが落ちてしまうこともタイムロスにつながります。 そのためには、正確で無駄のないフォームと、歩数と歩幅を守る独特のリズム感が必要です。

ハードルは上部に高さ70mm、厚さ10mm〜25mm、幅1m180〜1m200のバーを持つ長方形の枠組みと、長さ700mm以下の基底部2個から成っており、全体の重さは10kg以上あります。 ハードルの高さは種目によって異なりますので、調整可能です。長方形の枠組みには2本の支柱があり、それぞれの支柱は基底部の一方の末端に固定されています。 ハードルは、上部のバー上端の中央部分に加わった水平方向の力が、3kg600に満たない場合には倒れないように設計されていますが、各種目ごとに定められた高さにした状態で、3kg600〜4kgの場合には倒れるようにしなければなりません。 そこで、そのバランスを調節するための錘(おもり)が基底部に付けられています。

各ハードルは、選手の足などが当たった場合に倒れるよう、支柱が固定されていない側の基底部の一端を、走ってくる方向(スタートライン)に向けて置かれています。 良いタイム(記録)を出すためには、スピードを鈍らす原因となる、ハードルとの接触を最小限に抑えなければなりませんが、もしハードルを倒したとしても、審判長が「故意にやった」と判断しなければ、失格にはなりません。


〜 100mハードル競走(100mハードル、100mH) 〜

ハードルを10台跳び越えながら、100mを競走する種目で、女子のみ行われます。 ハードルの高さは840mmで、スタートラインから最初のハードルまでが13m、ハードル間の距離が8m500、最後のハードルからフィニッシュラインまでが10m500です。

100m競走と距離は同じですが、ハードルがあるため、走り方は多少異なります。 ハードル間は短く、歩数(3歩)と歩幅を守ってリズムを崩さないように走り抜けますので、最初のハードルを跳び越えるまでの加速が重要になってきます。 しかし、単にスピードを上げれば良いというわけではなく、正確にハードルを跳び越えられるよう、スタートから1台目までも歩数(通常8歩)を守って加速します。 高いハードルを跳び越え、ハードル間を刻むように走る、独特のリズミカルな動きが10台分続くと、残りは10m500。 最後のハードルを越えてからの走りも、勝負を左右します。

女子の世界記録:
12秒21(ヨルダンカ・ドンコワ/ブルガリア共和国)
女子の日本記録:
13秒00(金沢 イボンヌ)

〜 110mハードル競走(110mハードル、110mH) 〜

ハードルを10台跳び越えながら、110mを競走する種目で、男子のみ行われます。 ハードルの高さは1067mm(1m067)で、スタートラインから最初のハードルまでが13m720、ハードル間の距離が9m140、最後のハードルからフィニッシュラインまでが14m020です。

100m競走と距離は少ししか違いませんが、ハードルがあるため、走り方は多少異なります。 ハードル間は短く、歩数(3歩)と歩幅を守ってリズムを崩さないように走り抜けますので、最初のハードルを跳び越えるまでの加速が重要になってきます。 しかし、単にスピードを上げれば良いというわけではなく、正確にハードルを跳び越えられるよう、スタートから1台目までも歩数(通常8歩)を守って加速します。 高いハードルを跳び越え、ハードル間を刻むように走る、独特のリズミカルな動きが10台分続くと、残りは14m020。 最後のハードルを越えてからの走りも、勝負を左右します。

男子の世界記録:
12秒80(アリエス・メリット/アメリカ合衆国)
男子の日本記録:
13秒39(谷川 聡)

〜 400mハードル競走(400mハードル、400mH) 〜

ハードルを10台跳び越えながら、400mを競走する種目です。 ハードルの高さは男子が914mm、女子が762mmで、スタートラインから最初のハードルまでが45m、ハードル間の距離が35m、最後のハードルからフィニッシュラインまでが40mです。

400mを走るだけでも過酷です(「400m競走」参照)が、その上、10台のハードルを跳び越えなければならないのですから、想像を絶します。 スタートラインから最初のハードルまでは45mあり、かなり加速することができますので、1台目を跳び越える時の速度はトップスピードに近くなっているでしょう。 また、他のハードル競走種目とは異なり、ハードル間の距離が比較的長く、曲走路にもハードルが置かれているのが特徴です。 歩数を守るのは他のハードル競走種目と同様ですが、走りの中でたまにハードルを跳び越えるようなイメージで、カーブを曲がりながらのハードリング(ハードルを跳ぶこと)など、また違った技術が必要になってきます。

中盤以降になると体力が消耗し、足の動きも鈍くなってきますので、同じ歩幅を保つのは苦しくなり、多くの選手はハードル間の歩数を増やします。 しかし、歩数を切り替えるとき、歩幅もそれに合わせて適度なものにできなければ、次のハードルは上手に跳び越せません。 また、通常ハードル間の歩数は奇数で、常に同じ足で踏み切ることになりますが、歩数を増やし偶数になると毎回踏み切る足が変わります。 踏み切り足が変わっても、正確にハードルを跳び越せるだけの器用さが必要です。

後半になると体が悲鳴を上げだし、動きの鈍った足はハードルに引っ掛かりやすくなります。 しかし、そんな状態でハードルに足を引っ掛けてしまえば、転倒する可能性は高く、命取りになりかねません。 体は苦しくとも、ハードルを正確に跳び越えなければ勝利はつかめないでしょう。 最後のハードルを越えてからの40mは、まさに我慢比べ、最後の力を振り絞りフィニッシュラインへ体を押し進めます。 400mハードル競走は、過酷さの中にも精密な技術が要求される種目なのです。

男子の世界記録:
46秒78(ケビン・ヤング/アメリカ合衆国)
男子の日本記録:
47秒89(為末 大)
女子の世界記録:
52秒34(ユリア・ペチョンキナ/ロシア連邦)
女子の日本記録:
55秒34(久保倉 里美)

〜 リレー競走 〜

各選手がバトンを受け渡して順番に一定距離を走り、4人1組のチームで競走する種目の総称です。 4x100mリレー競走4x400mリレー競走が含まれます。 バトンは「テーク・オーバー・ゾーン」(「テイク・オーバー・ゾーン」)と呼ばれる20mの範囲内で次の走者に渡さなければならず、それ以外の場合は失格になります。 例えば4x100mリレー競走の場合、第1走者から第2走者への「テーク・オーバー・ゾーン」(「テイク・オーバー・ゾーン」)は、90m地点から110m地点までの範囲です。

各選手の走力は大切な要素ですが、バトンの受け渡しも重要です。 走力があるチームでも、バトンの受け渡しを失敗すればタイムロス(時間の無駄)になったり、場合によっては失格することもあります。 逆に、次の走者がある程度加速した状態でバトンを受け渡すことができれば、全体として高いスピードを維持できて、良い記録につながります。 ですから、失敗がなければ、リレー競走のタイム(記録)は、4人のタイムを合計したものよりも速いのが普通です。 例えば、男子100mの世界記録(9秒58)であっても、4倍したもの(38秒32)は、男子4x100mリレー競走の世界記録(36秒84)はおろか、日本記録(38秒03)にも及びません。

「世界陸上」では日程の終盤に国対抗で行われることもあり、非常に盛り上がる種目です。


〜 4x100m(400m)リレー競走 〜

4人が100mづつ分担し、合計400mを競走する種目です。 第1走者のスタートは「スターティングブロック」を使用した「クラウチングスタート」、レースは「セパレートレーン」(「セパレートコース」)で行われます。 第1走者以外は「テーク・オーバー・ゾーン」(「テイク・オーバー・ゾーン」)の手前10m以内の位置から走り始めても構いません。

男子の世界記録:
36秒84(ネスタ・カーター、マイケル・フラーター、ヨハン・ブレーク、ウサイン・ボルト/ジャマイカ)
男子の日本記録:
38秒03(塚原 直貴、末續 慎吾、高平 慎士、朝原 宣治)
女子の世界記録:
40秒82(ティアナ・マディソン、アリソン・フェリックス、ビアンカ・ナイト、カーメリタ・ジーター/アメリカ合衆国)
女子の日本記録:
43秒39(北風 沙織、橋 萌木子、福島 千里、市川 華菜)

〜 4x400m(1600m)リレー競走 〜

4人が400mづつ分担し、合計1600mを競走する種目です。 第1走者のスタートは「スターティングブロック」を使用した「クラウチングスタート」で行われます。 レースは、第2走者の第1曲走路の終わり(第2コーナーの出口)にある円弧状の「ブレークライン」(「ブレイクライン」)までは「セパレートレーン」(「セパレートコース」)、その後は「オープンレーン」(「オープンコース」)で行われます。 第1走者と第2走者は(スタート時、「セパレートレーン」ですので)決められたレーン内でスタートしますが、第3走者と第4走者は前の走者が200m地点を通過した時の順序通りに、内側から「テーク・オーバー・ゾーン」(「テイク・オーバー・ゾーン」)に並びます。 バトンの受け渡しが終わるまでに、この順序を変えると失格になります。

男子の世界記録:
2分54秒29(ジェローム・ヤング、アントニオ・ペティグルー、タイワリー・ワシントン、マイケル・ジョンソン/アメリカ合衆国)
男子の日本記録:
3分00秒76(苅部 俊二、伊東 浩司、小坂田 淳、大森 盛一)
女子の世界記録:
3分15秒17(タチアナ・レドフスカヤ、オルガ・ナザロワ、マリヤ・ピニギナ、オルガ・ブリズギナ/ソビエト社会主義共和国連邦)
女子の日本記録:
3分30秒17(青木 沙弥佳、丹野 麻美、久保倉 里美、木田 真有)

〜 跳躍競技 〜

跳躍した距離や跳び越えたバーの高さを競う種目の総称で、走り高跳び棒高跳び走り幅跳び三段跳びが含まれます。

距離を競う種目(走り幅跳び、三段跳び)の決勝では、各選手は順番に1回ずつ、3回の試技(跳躍)を行います。 その後、記録の良い順番で上位の8選手が、さらに3回の試技を行います(参加選手が8人以下の場合は、全選手が6回の試技を行います)。 順位は、各選手が(決勝で)行ったすべての試技のうち、最長の記録で決めるられます。 もし、最長記録が同じで、順位を決められない場合には、2番目の記録で決めます。 それでも決められない場合は、3番目の記録でというように、以下同様にして決めます。

高さを競う種目(走り高跳び、棒高跳び)では、特別な場合(世界記録を超える高さの場合など)を除いて、各ラウンドごとにバーの高さが予め決められていて、順番に上がって行きます。 各選手は自身が跳躍する権利を失うまでは、どのバーの高さ(ラウンド)に挑戦しても構いません。 3回連続して失敗すると、試技はそこまでとなり、その選手は跳躍する権利を失います。 また、3回連続して失敗するまでは、途中で挑戦するバーの高さを変更しても構いません。たとえば、ある高さを2回失敗したあと、次の高さに挑戦することも可能です。 ちなみにバーは重力で多少たわんでいますが、高さを測る際は一番低い部分の上部でと決められていますので、それによって得することはありません。 順位は、各選手が最後に成功した記録(つまり、その選手の最高記録)によって決められます。 もし、最高記録が同じで、順位を決められない場合には、その高さでの試技回数の少なさで決めます。 それでも決められない場合には、その高さまでに失敗した回数の合計で、少ない順に決めます。

参加選手が多い場合には予選が行われますが、距離を競う種目(走り幅跳び、三段跳び)の場合、(予選の際の)試技は3回までです。 高さを競う種目(走り高跳び、棒高跳び)の場合は決勝と同様で、3回連続して失敗するまでは試技を続けられます。 定められた予選通過標準記録に達した選手は、その時点で決勝進出が決定します。決勝進出者が必要な数(通常12人以上)に満たなかった場合は、予選の成績(最長記録または最高記録)順に追加補充します。

跳躍競技の各種目とも、1回の試技に使える時間が設定されていて、通常は1分です。 試技を行う人数が少ない場合には、それに合わせて定められた基準で時間が長くなります。 試技を開始できる準備が整った時点で審判員がその合図を行い、試技に使える時間も計り始めます。 決められた時間を越えても試技(を行うための助走)を開始しない場合には、1回分の無効試技(ファール)になります。

助走路には、助走を開始する位置などの目印として、「マーカー」と呼ばれるものを、各選手2個まで置くことができます。 走り高跳びを除いて、この「マーカー」は助走路の外側に置かなければなりません。 また、「マーカーは」通常主催者側が用意しますが、ない場合には粘着テープなど後で消せるものを使用します。


〜 走り高跳び 〜

助走して片足で踏み切り、跳び越えたバーの高さを競う種目です。 助走路の長さは、「世界陸上」のような大きな大会の場合、25m以上あります。 跳び越えるバーは、2本の支柱間を渡す形で、それぞれの支柱に取り付けられた「バー止」と呼ばれる台に乗せられます。 バーは、両端以外の断面が直径30mmの円で、長さは3m980〜4m020、両端は「バー止」に乗せた際転がらないように150mm〜200mmにわたって下が平らになっています。 (助走路から見て)バーの向こう側には、通常、着地場所としてマットが置かれていて、その大きさは幅6m、奥行4m、高さ700mm以上あります。

男子の世界記録:
2m45(ハビエル・ソトマヨル/キューバ共和国)
男子の日本記録:
2m33(醍醐 直幸)
女子の世界記録:
2m09(ステフカ・コスタディノヴァ/ブルガリア共和国)
女子の日本記録:
1m96(今井 美希)

〜 棒高跳び 〜

助走して手に持った棒(ポール)を「ボックス」と呼ばれるくぼみに突き立てて跳躍し、さらに棒の反発力を利用して身体を持ち上げ、跳び越えたバーの高さを競う種目です。 棒高跳びに使用するポール(棒)は、選手所有のものを持ち込むのが普通で、その材質、長さ、太さは自由です。 もし、試技中にポール(棒)が壊れた場合は、その試技を試技数に数えず、正常なポール(棒)を使用して、新たな試技を行えます

助走路の長さは、「世界陸上」のような大きな大会の場合、45mあります。 跳び越えるバーは、2本の支柱間を渡す形で、それぞれの支柱に取り付けられた「バー止」と呼ばれる台に乗せられます。 バーは、両端以外の断面が直径30mmの円で、長さは4m480〜4m520、両端は「バー止」に乗せた際転がらないように150mm〜200mmにわたって下が平らになっています。 (助走路から見て)バーの向こう側には、通常、着地場所としてマットが置かれていて、その大きさは幅5m〜6m、奥行5m〜6m、高さ800mmあります。

男子の世界記録:
6m14(セルゲイ・ブブカ/ウクライナ)
男子の日本記録:
5m83(澤野 大地)
女子の世界記録:
5m06(エレーナ・イシンバエワ/ロシア連邦)
女子の日本記録:
4m40(我孫子 智美)

〜 走り幅跳び 〜

助走して片足で踏み切り、跳躍した距離を競う種目です。 助走路の端から「踏切線」(「踏み切り線」)までは40m以上あります。 踏み切り位置には「踏切板」とよばれるものが埋められてあり、その「踏切板」の着地場所(砂場)に近い方の端が「踏切線」です。 「踏切板」は、長さ(助走路に立つ選手から見れば、幅)1m220、幅(同じく、奥行き)200mm、厚さ100mmで、着地場所の砂場から1m〜3mの距離に設置するように決められており、通常は2mの位置にあります。 また、「踏切線」の着地場所に近い側(助走路から見れば向こう側)には、足跡が付いて「踏切線」を越えたことの判定がしやすいように粘土板が置かれています。

跳躍の際には(助走路に立つ選手から見て)「踏切線」の手前で踏み切らなければなりません。 足を含め身体のどこかが「踏切線」を越えた場合はファール(無効試技)になります。 「踏切板」の両端より外側で踏み切ったり、跳躍せずに走り抜けたり、「踏切線」と着地場所(砂場)の間で着地した場合もファールです。 さらに、助走を開始してから着地するまでの間に、宙返りのような動作をすることは禁止されていて、行った場合はファールになります。 また、着地の際に、「踏切線」にもっとも近い着地の痕跡よりも、さらに近い位置で着地場所(砂場)の外側の地面に触れた場合はファールです。 着地場所(砂場)を離れる際の(着地場所の外側の地面に触れる)第1歩目が、「踏切線」にもっとも近い着地の痕跡よりも、さらに近い場合にもファールになります。

男子の世界記録:
8m95(マイク・パウエル/アメリカ合衆国)
男子の日本記録:
8m25(森長 正樹)
女子の世界記録:
7m52(ガリナ・チスチャコワ/ソビエト社会主義共和国連邦)
女子の日本記録:
6m86(池田 久美子)

〜 三段跳び 〜

助走して、まず片足で(「ホップ」)、次に同じ足で(「ステップ」)、さらに反対の足で(「ジャンプ」)踏み切り、これら3つの連続した跳躍による飛距離を競う種目です。 助走路の端から「踏切線」(「踏み切り線」)までは40m以上あります。 踏み切り位置には「踏切板」とよばれるものが埋められてあり、その「踏切板」の着地場所(砂場)に近い方の端が「踏切線」です。 「踏切板」は、長さ(助走路に立つ選手から見れば、幅)1m220、幅(同じく、奥行き)200mm、厚さ100mmで、通常、着地場所の砂場から男子の場合は13m以上、女子の場合は10m以上の距離に設置されています。 また、「踏切線」の着地場所に近い側(助走路から見れば向こう側)には、足跡が付いて「踏切線」を越えたことの判定がしやすいように粘土板が置かれています。

跳躍の際には(助走路に立つ選手から見て)「踏切線」の手前で踏み切らなければなりません。 足を含め身体のどこかが「踏切線」を越えた場合はファール(無効試技)になります。 「踏切板」の両端より外側で踏み切ったり、跳躍せずに走り抜けたり、「踏切線」と着地場所(砂場)の間で(3つ目の跳躍である「ジャンプ」)の着地をした場合もファールです。 さらに、助走を開始してから(3つ目の跳躍である「ジャンプ」)着地をするまでの間に、宙返りのような動作をすることは禁止されていて、行った場合はファールになります。 また、着地の際に、「踏切線」にもっとも近い着地の痕跡よりも、さらに近い位置で着地場所(砂場)の外側の地面に触れた場合はファールです。 着地場所(砂場)を離れる際の(着地場所の外側の地面に触れる)第1歩目が、「踏切線」にもっとも近い着地の痕跡よりも、さらに近い場合にもファールになります。

男子の世界記録:
18m29(ジョナサン・エドワーズ/グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国、通称イギリス)
男子の日本記録:
17m15(山下 訓史)
女子の世界記録:
15m50(イネッサ・クラベッツ/ウクライナ)
女子の日本記録:
14m04(花岡 麻帆)

〜 投擲(てき)競技 〜

物を投げて、その飛距離を競う種目の総称で、砲丸投げ円盤投げハンマー投げやり投げが含まれます。 競技に使用する器具(砲丸、円盤、ハンマー、やり)は、主催者側がIAAF認定のものを何種類か用意します。 選手側で用意したい場合には、主催者側の公認を受けたIAAF認定の器具を、全選手が使えるようにすれば可能です。 記録が認められる着地場所の範囲は、砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げの場合、サークルの中心を頂点とした34.92度の角度をなす白線の内側です。 やり投げの場合は、円弧状に引かれたスターティングラインの中心を頂点とした約29度の角度をなす白線の内側です。

砲丸、円盤、ハンマーの頭部、やりの先端が落下後最初に残した痕跡が、各種目で定められた着地場所の範囲を示すライン上やその外側の場合、ファウル(無効試技)になります。 また、投擲動作開始後、投げた用具が地上に落下するまでに、サークル(砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ)や助走路およびスターティングライン(やり投げ)の外側に出た場合もファウルです。 さらに投擲後、サークルの外に出る際(砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ)は、サークルの中心を通って左右に引かれている白線よりも後ろ側、助走路から離れる際(やり投げ)は、スターティングラインの後ろ側でなければなりません(違反するとファウルです)。

決勝では、各選手は順番に1回ずつ、3回の試技(投擲)を行います。 その後、記録の良い順番で上位の8選手が、さらに3回の試技を行います(参加選手が8人以下の場合は、全選手が6回の試技を行います)。 順位は、各選手が(決勝で)行ったすべての試技のうち、最長の記録で決めるられます。 もし、最長記録が同じで、順位を決められない場合には、2番目の記録で決めます。 それでも決められない場合は、3番目の記録でというように、以下同様にして決めます。

参加選手が多い場合には予選が行われますが、(予選の際の)試技は3回までです。 定められた予選通過標準記録に達した選手は、その時点で決勝進出が決定します。 決勝進出者が必要な数(通常12人以上)に満たなかった場合は、予選の成績(最長記録)順に追加補充します。

投擲競技の各種目とも、1回の試技に使える時間が設定されていて、通常は1分です。 試技を行う人数が少ない場合には、それに合わせて定められた基準で時間が長くなります。 試技を開始できる準備が整った時点で審判員がその合図を行い、試技に使える時間も計りはじめます。 決められた時間を越えても試技を開始しない場合には、1回分の無効試技(ファール)になります。


〜 砲丸投げ 〜

砲丸と呼ばれる球を投げて、その飛距離を競う種目です。 投擲競技に含まれる他の種目は、英語で表記する場合、“Discus Throw”(円盤投げ)、“Hammer Throw”(ハンマー投げ)、“Javelin Throw”(やり投げ)のように、“Throw”がつきます。 しかし、砲丸投げは“Shot Put”と言い、その動作は、投げるというより、押し出すような感じです。

競技に使用する砲丸は、男子の場合が重さ7kg260以上、直径110mm〜130mm、女子の場合が重さ4kg以上、直径95mm〜110mmで、直径2m135のサークルと呼ばれるコンクリート(または他の堅固で滑りにくい材質)製の円の中から投げます。 砲丸投げの選手は体格が良く、砲丸を軽そうに扱っていて、重そうに見えないかも知れません。 しかし、男子の場合は、16ポンドのボーリング球と同じ重さです。それを20m以上も投げるのですから、その力と技術に驚くでしょう。

砲丸は、あごまたは首につけて(あるいはそれに近い状態で)構え、肩から片手だけで投げなければなりません。 また、投げる動作の中で、両肩を結ぶ線より後ろに砲丸を持ってきてもいけません。 投げる方向には、サークルの縁に沿う形で高さ100mmの足留材が設けられていますが、投擲動作開始後、砲丸が落下するまでの間、その上部に身体のどこかが触れた場合もファウル(無効試技)になります。

男子の世界記録:
23m12(ランディー・バーンズ/アメリカ合衆国)
男子の日本記録:
18m64(山田 壮太郎)
女子の世界記録:
22m63(ナタリア・リソフスカヤ/ソビエト社会主義共和国連邦)
女子の日本記録:
18m22(森 千夏)

〜 円盤投げ 〜

円盤を投げて、その飛距離を競う種目です。 競技に使用する円盤は、男子の場合が重さ2kg以上、直径219mm〜221mm、女子の場合が重さ1kg以上、直径180mm〜182mmで、直径2m500のサークルと呼ばれるコンクリート(または他の堅固で滑りにくい材質)製の円の中から投げます。 投げ方は自由ですが、円盤を片手に持ち、腕を広げた状態で身体を回転させる方法が主流です。 円盤には、投げる方向に力を掛けるだけではなく、回転力も与えます。 適度な角度で円盤を投げると、浮力を得て距離が伸びます。 力任せに投げているように見えるかも知れませんが、円盤を微妙にコントロールする繊細な技術も必要です。

男子の世界記録:
74m08(ユルゲン・シュルト/ドイツ民主共和国、通称:東ドイツ)
男子の日本記録:
60m22(川崎 清貴)
女子の世界記録:
76m80(ガブリエレ・ラインシュ/ドイツ民主共和国、通称:東ドイツ)
女子の日本記録:
58m62(室伏 由佳)

〜 ハンマー投げ 〜

ハンマーを投げて、その飛距離を競う種目です。 競技に使用するハンマーは、両手で持つためのハンドル(取っ手)、金属製の頭部(球)、それらを結ぶワイヤ(接続線)の3つの主要部分から成り立っています。 男子の場合が重さ7kg260、頭部の直径が110mm〜130mm、ワイヤの長さが1175mm〜1215mm、女子の場合が重さ4kg、頭部の直径が95mm〜110mm、ワイヤの長さが1160mm〜1195mmで、直径2m135のサークルと呼ばれるコンクリート(または他の堅固で滑りにくい材質)製の円の中から投げます。 投げ方は自由ですが、自分が回転(ターン)することによってハンマーを加速させて放り投げるのが普通です。 正確なターンと的確なハンマーのコントロールを行う繊細な技術、速度を上げたハンマーが生み出す強大な遠心力に耐えうる強靭な肉体、その両方が必要です。

※ハンマー投げの特徴につきましては、〜2003年 7月 8日号〜「ハンマー投げで室伏広治選手が84m86の大記録!」もご覧ください。

男子の世界記録:
86m74(ユーリー・セディフ/ソビエト社会主義共和国連邦)
男子の日本記録:
84m86(室伏 広治)
女子の世界記録:
79m42(ベティー・ハイドラー/ドイツ連邦共和国)
女子の日本記録:
67m77(室伏 由佳)

〜 やり投げ 〜

やりを投げて、その飛距離を競う種目です。 競技に使用するやりは、先端がとがった金属製の穂先、柄、(柄に)紐を巻いたグリップの3つの主要部分から成り立っており、グリップは重心位置でなければなりません。 男子の場合が重さ800g、長さ2m600〜2m700、女子の場合が重さ600g、長さ2m200〜2m300で、助走路で勢いをつけてスターティングラインの後方から投げます。 飛び方に影響を与える重心の位置は定められており、先端から重心までの距離は男子が900mm〜1060mm、女子が800mm〜920mmです。 過去には、飛距離が出すぎて危険なため、重心位置が変更になったこともありました。 走って勢いをつけるための助走路は幅4m、長さ30m〜36m500(33m500以上が望ましい)で、スターティングラインは半径8mの円弧状です。

やりは、グリップ部分を握り、(やりを持っている側の)肩または腕の上で投げなければなりません。 振り回して投げるなど、それ以外の方法は禁止されています。 他の部分よりも先に、やりの先端(穂先)が地面に落下した場合だけ有効で、それ以外の場合はファウル(無効試技)になります。

助走路には、助走を開始する位置などの目印として、「マーカー」と呼ばれるものを、各選手2個まで置くことができます。 この「マーカー」は助走路の外側に置かなければなりません。 また、「マーカーは」通常主催者側が用意しますが、ない場合には粘着テープなど後で消せるものを使用します。

男子の世界記録:
98m48(ヤン・ゼレズニー/チェコ共和国)
男子の日本記録:
87m60(溝口 和洋)
女子の世界記録:
72m28(バルボラ・スポタコバ/チェコ共和国)
女子の日本記録:
62m83(海老原 有希)

〜 混成競技 〜

特性が異なる複数の種目を行って、その記録を点数化し、合計得点で競います。 十種競技七種競技が含まれ、いずれも2日間かけて行われます。 選手は全種目に参加しないと、最終順位には加われません。 1種目でもスタートしなかったり1回も試技をしなかった場合、それ以降の種目に参加することはできず、競技を棄権したとみなされます。 各種目の基本的なルールは単独で行われるものと同じですが、走り幅跳びと投擲(とうてき)競技の試技が3回など、一部例外もあります。

短距離競走中距離競争ハードル競走跳躍競技投擲(とうてき)競技といった、異なる特徴を持つ各種目に対応する必要がありますので、あらゆる身体的能力が要求されます。 また、連続する2日間で多くの種目を行うため、体力の消耗が激しく、非常に過酷な競技です。 各選手とも得手不得手な種目がありますので、最終種目が終わるまで勝者が誰になるのか分かりません。


〜 十種競技(十種、デカスロン) 〜

男子のみの競技で、1日目に、100m競走走り幅跳び砲丸投げ走り高跳び400m競走、2日目に、110mハードル競走円盤投げ棒高跳びやり投げ1500m競走が順に行われます。

十種競技の選手は、あらゆる種目に対応するため、各種目を専門にするそれぞれの選手とは、体格が違います。 特に中距離選手との差は大きく、比較的筋肉量の多い大柄な十種の選手が、1500mを苦しそうに走る姿は、異様な感じすらします。 最終種目ということもあり、特に盛り上がるのが1500m競走です。

あらゆる身体的能力が要求されるこの競技の勝者は、「キング・オブ・アスリート」と賞賛されます。

男子の世界記録:
9039ポイント(アシュトン・イートン/アメリカ合衆国)
100m:10秒21、走り幅跳び:8m23、砲丸投げ:14m20、走り高跳び:2m05、400m:46秒70、110mハードル:13秒70、円盤投げ:42m81、棒高跳び:5m30、やり投げ:58m87、1500m:4分14秒48
男子の日本記録:
8073ポイント(右代 啓祐)

〜 七種競技(七種、ヘプタスロン) 〜

女子のみの競技で、1日目に、100mハードル走り高跳び砲丸投げ200m競走、2日目に、走り幅跳びやり投げ800m競走が順に行われます。

あらゆる身体的能力が要求されるこの競技の勝者は、「クイーン・オブ・アスリート」と賞賛されます。

女子の世界記録:
7291ポイント(ジャッキー・ジョイナー・カーシー/アメリカ合衆国)
100mハードル:12秒69、走り高跳び:1m86、砲丸投げ:15m80、200m:22秒56、走り幅跳び:7m27、やり投げ:45m66、800m:2分08秒51
女子の日本記録:
5962ポイント(中田 有紀)

〜 競歩 〜

左右どちらかの足を常に地面に接するようにし、前に踏み出した脚を接地の瞬間から垂直の位置になるまで曲げないようにする歩き方で、その速さを競います。 両方の足が地面から離れると「ロス・オブ・コンタクト」、前に踏み出した脚を接地の瞬間から垂直の位置になるまでに曲げると「ベント・ニー」という反則を取られます。 合計3人以上の審判から(つまり累積3回以上の)反則を取られると、失格となり、コースを離れなければなりません。 持久力が必要なだけではなく、正確なフォームで歩き続けなければ、ゴールできないのです。 距離の表記は、トラックのみを使用する場合は“m”、主に道路の場合は“km”を使用します。

一般的な感覚では、競歩と言えど歩くわけですから、速度は遅いと思われるかも知れません。 しかし、男子20km競歩の世界記録は1時間17分16秒ですので、その速度は約15.53km/h(20km÷1時間17分16秒=20000m÷4636s=約4.31m/s=約15.53km/h)、とても歩いているとは思えないスピードなのです。 100mを約23秒、1kmを約3分52秒で歩く、このペースで実際に走ってみると(たとえば、どれぐらいの距離を続けられるか試してみると)、その速さを実感できると思います。 また、マラソンコース(42km195)を男子50km競歩の世界記録(3時間34分14秒)ペースで歩いた場合、約3時間00分47秒でゴールできるという計算になります(42.195km÷(50km÷3時間34分14秒)=42195m÷(50000m÷12854s)=約10847秒=約3時間00分47秒)


〜 20km競歩(20kmW) 〜

主に道路(一部区間はトラック)を使って20kmを競歩する種目です。

男子の世界記録:
1時間17分16秒(ウラジミール・カナイキン/ロシア連邦)
男子の日本記録:
1時間18分34秒(鈴木 雄介)
女子の世界記録:
1時間25分02秒(エレーナ・ラシュマノワ/ロシア連邦)
女子の日本記録:
1時間28分03秒(渕瀬 真寿美)

〜 50km競歩(50kmW) 〜

主に道路(一部区間はトラック)を使って50kmを競歩する種目で、男子のみ行われます。

男子の世界記録:
3時間34分14秒(デニス・ニジェゴロドフ/ロシア連邦)
男子の日本記録:
3時間40分12秒(山崎 勇喜)

※当ページで紹介しておりますのは、「世界陸上大阪」で行われる種目のみです。
※世界記録と日本記録につきましては、それぞれIAAF(国際陸上競技連盟)およびJAAF(日本陸上競技連盟)の、各公式ウェブサイトに掲載されているデータを使用しております。

〜 関連リンク 〜

日本陸上競技連盟

IAAF(国際陸上競技連盟)(英語のページです)







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